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歯の健康や治療についての当院院長のコラムを掲載いたします

虫歯治療と予防

(その1)
今回は初期虫歯の治療について説明します。
 初期虫歯とは歯を少し削って詰め物を行う事が多い治療です。虫歯が浅い時は麻酔なしで行います。
 詰め物はたくさんの種類があります。保険内では、グラスアイオノマー系のセメント類やプラスチック系のレジン類が白い材料で、金属類では、金・パラジウム合金や銀合金やニッケル合金などが使われています。
 保険外ではハイブリッドセラミックやセラミックがあり、金属類では、金やプラチナの合金が使われます。
 このように初期虫歯と言っても多くの使用材料の中から選択が可能です。またこれ以外にも、虫歯を削らずに虫歯菌を殺して上を塞ぐ治療を行う医院もあります。
 初期虫歯は簡単に治療できますが、材料選びやメンテナンスが悪いと長持ちせずに再治療が必要になります。再治療を何回も行ううちに歯はだんだん弱くなり、そのうち歯全体を被せる治療になります。そうならない為には最初が大切です。保険内の治療なら何でもいいぐらいの軽い気持ちで治療している方が多いのですが、歯の状況に合った最適の治療を行い、以後もこまめにメインテナンスが必要になります。そう考えると虫歯にならない為の予防がいかに大切かがわかると思います。予防については次回に続きます。

(その2)
予防の大切さは前回説明しましたが、実際に正しい予防法を行っている方は、ほとんどいません。
予防はたくさんの方法があり、家庭で行うものと、歯科医院で行うものがあります。
家で行う予防についてまず説明します。最大の予防は、虫歯の原因である糖分の入った食事やドリンクをとらない事です。これができれば特別な予防は必要ありませんが、現実は難しいでしょう。家で行う予防としては、フッ素などの薬用成分の入ったはみがきを使ったブラッシングやうがいを行います。またデンタルフロスや歯間ブラシを使い歯と歯の間の汚れをとる事も重要です。
歯科医院で行う予防は、フッ素を定期的に塗ったり虫歯のできやすい咬む面の溝を予防的に埋めるシーラントが主に行われてきましたが、その他に歯列不正の改善や必要ない親知らずの抜歯も必要です。
次に最新の虫歯予防法について説明します。この予防法は、デンタル・ドラッグ・デリバリー・システムとよばれ、通常3DSと略します。治療の流れは、まず、除菌が必要かどうかの虫歯菌の検査を行い、必要な方には、歯型をとり専用のマウスピースを作製します。それを使って内部に抗菌剤やフッ素入りジェルを入れて口腔内で保持して作用させます。3DSは、次回詳しく説明します。

(その3)
前回説明しました3DSについて詳しく説明していきます。
治療の流れは、まず口腔のミュータンス菌の検査を行い、除菌の必要性を確認します。虫歯の危険度の高い方もしくは、予防を希望される方には、歯型をとり専用マウスピースを作製します。
次に、歯科衛生士によりPMTCと呼ばれる徹底した歯の清掃を行います。その後マウスピースに抗菌剤を入れて5分程維持し、除菌を行います。
家では毎日マウスピースにフッ素ジェル等を入れて使用します。歯科医院での除菌は4~6ヶ月ごとに行えば効果がとぎれることなく続きます。
この3DS予防法は、虫歯で多くの歯を治療した方の二次虫歯の予防や、小児の方全般、そして歯ならびが悪い方に特に有効です。また、口臭が気になる方にも有効といわれています。
小児では、成長に合わせてマウスピースの再製作が必要になり費用も多くかかりますが、虫歯治療が必要になったり、虫歯が原因で咬み合わせ歯ならびが悪くなったりする事を考えれば予防に力を入れる方が有効だと思います。
あとこれはマウスピースを作製する事によって可能になる治療について説明します。それはホワイトニングと歯列矯正です。予防と審美の同時治療もできる事も知って下さい。

(その4)
今回は実際の虫歯治療について詳しく説明します。
基本的な流れは、虫歯を削って何かをそこに埋めます。虫歯の大きさや部位によって、その日のうちに終了するケースと型どりを行い後日セットするケースがあります。
当日終了のケースではほとんど全部が保険内の白い材料を詰めますが、変色やすり減りの少ない保険外のハイブリッドセラミックを詰める事もできます。
型どりをするケースは数多くの治療パターンがあります。保険内で可能なものは、銀色の歯科用合金による詰め物か冠です。また小臼歯なら白色のプラスチック系の材料の冠も可能ですが強度に問題があります。
虫歯治療の型どりする場合の材料で、適合がよく咬み合わせが安定するものは金を多く含む保険外の金色の合金ですが、金属色の詰め物や冠は好まれない方が多くなったので、最近は金歯はほとんど出ません。
最近多いのは、やはり白色のセラミック系の材料です。審美性は高くなかなか破損しにくくなっていますが、金属と比べると弱いので、保証をどこまでしてくれるのかを確認しておかないとトラブルになります。また白色の材料は、色合わせが難しく技術の高い所とそうでない所の差が大きく不満足な状態で終ることがないように自分の意見をはっきり言わないと後悔することになります。

(その5)
虫歯治療の中でも特に難しいのは、神経の近くまで虫歯が進行して冷水痛などの自覚症状があるケースです。
深い虫歯では埋める材料等を考える以前に神経を残したまま穴を埋めるのか、神経を取って治療するのかの判断が重要です。治療に時間がかけられない方は即日の判断が求められますが非常に難しいケースもあります。当院では基本的に神経はなるべく残しますが、後で痛み出して再治療をしたくないという方は希望を優先する事もあります。
神経を取るかどうか迷うケースでは、穴に薬を埋めて経過観察を行う治療が最良ですが、治療期間が即決するのと比べてかなり長くなってしまうという欠点があり、短期間の治療を希望されるとこれを行うことができません。
このように虫歯が進行してしまうと簡単に治療が終らなくなります。こうなる前の早期治療が何より大切です。自分で口の中を見て黒くなっていたり穴があいた状態になっていたら、症状がなくてもすぐに治療が必要です。

(その6)
前回虫歯が進行した場合に神経を残すかどうかの説明をしましたが、どちらの方がよりよい治療なのかの判断の考え方について詳しく説明します。
基本的に神経を取る治療の場合、歯の色が黒く変色したり、根管治療が完全でないと後で中に膿がたまり腫れ痛みが出たり、歯が弱くなり破折したりする可能性が出ます。
しかしこれは可能性であり、必ずなるわけではありません。また、神経をギリギリで残す場合には、冷温水痛が悪化して神経を取る治療に変更しないといけなくなる場合もあります。そうなると先に上部に冠などを入れているとやり直しの治療も必要になってしまいます。よってどちらがよいかの判断は困難な場合が多くなります。
この問題で大切なのは、神経を取らない治療の方がよいと最初から決めつけない事です。歯科医師はその歯の状況と全体の計画から判断してどちらがよりよいか診断を行います。その診断をもとに治療を進める方がスムーズです。前に説明した薬をつめてしばらく経過を見る方法などもありますが、そういう歯が多数あるとかなり治療期間が長くなってしまいます。
もちろん時間がいくらかかっても最善の治療を希望するという方は何の問題もありませんが、治療をなるべく早く終わらせたい方が多いのが現状です。

(その7) 今回は虫歯でも、かなり進行してほとんど歯がなくなった状態の歯について説明します。
このような歯は、治療を行うか抜歯するかの判断からしないといけません。簡単で確実な治療は抜歯してブリッジや義歯を入れる治療ですが、歯科医師の診断で時間をかけて治療すればまだ使えると思われるものは、治療をすすめます。
患者さんの多くは周囲にまだ健康な歯が多く残っていて抜歯しても入れ歯にしなくてもいい状態なら抜歯を希望され、抜歯すると入れ歯になるケースでは抜かずに何とかする事を希望されますが、抜歯したら入れ歯になるという状況を作らない為には、少しでも多くの歯を残す事を考えないといけません。
虫歯がひどくほとんど歯の形が残っていない歯の治療ですが、レントゲンを見て、抜歯しなくてもいいと判断した場合には、根管治療を行い根の先にたまった膿を出したり、歯周外科手術を行い、周囲の歯ぐきの整形などを行った後に、歯に土台を立てて上に冠を被せます。さらに単独では弱いと判断した時には周囲の歯と連結補強をします。
このように抜歯かどうかの判断となるような虫歯は治療が大変ですが、患者さんの診断では抜かないといけないと思ったものでも何とかなるケースも多いのであきらめずに相談にこられて下さい。

(その8)
これまで虫歯の治療法や予防法について詳しく説明を行ってきましたが、一般の方が、いつ何を行えばその方にとってベストな予防や虫歯治療を行えるのかの判断は、自分ではなかなかできません。
特に難しいのは小児で、新しい歯が萌出して歯の本数が変化し、いつそうなるかは個人差が大きくなっています。また、乳歯は永久歯と比べると虫歯の進行速度が速くなっています。
よって、小児の場合には年に数回の定期健診が必要となります。
大人の場合は小児と比べ、口腔内の変化が少ないので定期健診は必要ないように思われがちですが、虫歯に関しては年に1回ぐらいでもよろしいと思いますが、歯周病に関しては状況により年に2~4回の定期健診を行うのが理想です。
これまで痛くならないと歯科に行かなかった方が定期健診を始めるのは、きっかけが大切です。6月には歯の衛生週間があり、歯科医師会でも検診や相談にとりくんでいます。この時期を利用して定期健診を始めてみてはどうですか。
何の病気も予防が大切です。歯科でも痛くならないと行かない方と定期健診を行う方の差は大きく、残存歯数に大きな違いが出ています。また、痛い治療はしたくない方も多数いますがその為には早期発見が大切で、定期健診以外に方法はありません。

月刊 嘉麻の里 11~6|VOL270~277 掲載